マダムゆうこの独り言

PR会社社長。子どもを育てながら仕事を続けてきた経験をもとに働く女性を応援したい。

日本はかつてのポルトガルになるのか?

3.11に砕かれた近代の成長信仰

もやっとした不安

朝日新聞4月7日 オピニオンより

この記事を一部紹介したいと思います。

発言者は「世界システム論」の研究者である大阪大学名誉教授 川北稔氏です。

いま、私たちはどういう時代を生きているのだろうか。歴史は何を教えてくれるのだろうか。

近代国家でこれだけの災害と事故に襲われた例はありません。

近代とは経済成長を前提とした時代です。どうしたら経済成長ができるのか。

人々はこれを追い求め、国が後押しし、学者が研究してきました。

この成長を裏打ちしたのが、地理的な拡大と科学技術の発展でした。

15世紀以降、西ヨーロッパの国々は食料や資源、労働力を求めて

世界の隅々にまで出かけていきました。

しかし、地球には限りがありやがて成長は壁にぶつかりそうになりました。

それを突破してきたのが科学技術の発展でした。

エネルギー問題を解決してきたのも科学技術、石炭から、石油へ、そして原子力へ、

科学技術は魔法の杖で自然の脅威から我々の生命や財産を守ってくれました。

しかし、今回それがいっぺんに揺らいでしましました。

日本は世界的に見てもっとも科学技術が進んだ国です。

その日でさえ科学技術が生んだ原子力発電所が厄災を生み出し続けています。

人間が作りだしたものによって人間が大きな厄災を受ける。

今度の原発事故は戦争に似ているかも知れません。

これまで、大きな災害は科学技術で乗り越えればよかった。

今は、科学技術でも乗り越えられない自然災害があること、

その科学技術が強大な災害を生んでしまうことが

明らかになりました。

近代社会を1つのシステムとして見る考え方があります。

アメリカの社会学ウォーラーステイン

「世界システム」と名付けました。

これによると世界システムは16世紀の西ヨーロッパを中心に生まれました。

その後太平洋を渡ってアメリカに移っていきます。

全盛期の西ヨーロッパ諸国の中でも消長や興亡がありました。

先頭を切ったのはポルトガルやスペインでしたが、

やがてオランダやイギリスに抜かれてしましました。

ポルトガル陥没の直接の契機は18世紀半ばに起こった

地震津波といわれていますが

これは正しくありません。

重要なのは戦災前から地位が低下していたところを襲われた

ことです。

日本の場合も「中国に追い越されてしまった」と

思っていたところに大震災が来ました。

日本はかつてのポルトガルのようになるのでしょうか?

18世紀当時、近代世界システムの中心にあったロンドンは

政治・文化すべ手が一極に集中していました。

当時の日本は、政治⇒江戸、経済⇒大阪、文化(権威)⇒京都と

3つの都市に分かれていました。

それと同じ例が17世紀のロンドン(政治)リバプール(経済)です。

日本はかつてのポルトガルのようになるのか?

現在のポルトガルはある意味で安定し、

人々は幸せな人生を送っているではないですか?

もっともそれを「安定」と受け止めるためには

我々の価値観やメンタルな部分を変える必要があります。

「ずっとトップを走らないと不安」ということでは

被災後」をうまくやっていくことはできないでしょう。